【5月21日 AFP】オーストラリア・ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の警察は20日、このほど行われた4日間にわたる一斉捜査で、ドメスティック・バイオレンス(DV)の容疑者554人を逮捕・訴追したと発表した。

 州警察によると、中には、踏みつけられてろっ骨を折られたり、顔や腎臓を負傷させられたりしたケースもあった。

 オーストラリアでは今年すでに28人の女性が暴力を受け死亡している。これは平均で4日に1人が命を落としている計算となり、昨年の同時期に記録された14人から倍増した。シドニー・ボンダイ(Bondi)の商業施設で先月起きた事件では、女性5人が刺殺された。同国では、こうした女性を標的にした凶悪事件が相次ぎ、性別に基づく暴力やDVの問題に注目が集まっている。

 一連の事件を受け、アンソニー・アルバニージー(Anthony Albanese)首相は「国家的危機」だと述べ、DV加害者から避難する女性への助成を拡充すると発表した。

 豪政府の統計によると、親密なパートナーによる暴力(IPV)で命を落とす人の数は過去30年で下降傾向にある。

 また2023年の経済協力開発機構(OECD)のデータでは、オーストラリアの女性が「一生の間に親密な関係のパートナーから暴力に遭う可能性」は、他のOECD加盟国の平均よりも低い。カナダ、米国、英国は、いずれもオーストラリアの数字を上回っている。

 シドニーのDV被害者女性用避難施設(シェルター)「ルーズ・プレース(Lou's Place)」の責任者は、生活費の高騰、住宅およびシェルター不足といった理由から、女性たちは暴力を振るう相手との生活を続けざるを得ない状況に置かれてしまっているとし、またこうした状況が死者数の増加に寄与している可能性も指摘した。

 映像前半は実施された一斉検挙、ニューサウスウェールズ州警察より提供。後半はシドニーのシェルター、9日撮影。(c)AFP/Laura CHUNG